インセット量の算出方法(前編)

01’12/22記


 昨今、累進レンズでインセット量を度数等によって可変させたタイプが出回るようになってきました。
このインセット可変タイプの利点や問題点は既にご紹介した通りですが、
「計算方法は?」
のお問い合わせを多く頂きましたので、今回はそのリクエストにお応えし、遠用PDと近用PDの差である
インセット量を算出する計算方法を、2回に分けてご紹介致します。
前編の今回は、基本となる度数を0D(度数の概念なし)とした計算を行います。


 図中の/AB(赤線部分)が、インセット量となります。
求める方法はいくつかあり、三角関数を使っても算出できますが、△OABと△OCDが相似形になってい
ることに注目すれば、比率計算で求めることが出来ます。
例をあげながら説明すると・・・



角膜から眼球の回旋軸 = 13mm
レンズ間距離 = 12mm
PD = 60mm(片眼PD = 30mm)
近業作業距離 = 35cm(350mm)

350 + 13 = 363 ・・・・・ /OCを算出
13 + 12 = 25   ・・・・・ /OAを算出
25 / 363 ≒ 0.06887 ・・・・・/OCと/OAの比率を算出
0.06887 × 30 ≒ 2.1

∴ /AB(インセット量)は、約2.1mmとなる。

これを、一つの式にまとめると・・・

インセット量 =
遠用PD・(角膜から眼球の回旋軸 + レンズ間距離)/ (角膜から眼球の回旋軸 + 近業作業距離)
と、なります。


上記計算式により、遠用PDと近業作業距離によって、どれだけ片眼の輻輳が必要となるか計算したの
が下記の表です。 (角膜から眼球の回旋軸 距離 = 13mm , レンズ間距離 = 12mm) 

近業作業距離(cm)
20 30 40 50




(mm)
25 2.8 1.9 1.5 1.2
30 3.3 2.3 1.8 1.4
35 3.9 2.7 2.1 1.7

 このように、眼軸、レンズ間距離、PD、作業距離によってインセット量は変化します。
眼軸、レンズ間距離、PDは、距離が長くなるほどインセット量は増して行き、作業距離は近くなる程、
インセット量は増します。



ちなみに・・・
 ダイレクトに、近用PDを算出る場合
近用PD =
遠用PD・(近業作業 − レンズ間距離)/ (角膜から眼球の回旋軸 + 近業作業距離)
と、上式を変換した式を使うと便利です。



※上記計算の計算プログラムを組んでみました。こちら

次回は、度数の概念もモーラさせた計算方法をご紹介致します。